あらすじ
時代:18世紀のはじめ
場所:ウクライナ
序曲:マゼッパの騎乗
第1幕
第1場: ドニエプル川河畔に建つコチュベイの邸宅
小作人の少女の一団が船で川を渡っており、歌いながら花の冠を作って川へ投げ込み未来の夫を当てるという占い遊びに興じている。マリヤが到着すると彼女も加わるように皆が一生懸命に誘うが、自宅にヘトマンのマゼッパを待たせていたためマリヤは彼女らとその場にいることはできない。彼女らが去ると、マリヤはその遊びにはもはや心を魅かれないことを明かす。なぜなら彼女はマゼッパに恋をしているからである。幼馴染であるアンドレイが彼女の声をふと耳にし、彼女を慰めようとする。マリヤがアンドレイの温かい友情に感謝すると、彼はずっとマリヤのことが好きだったと打ち明ける。彼女はこれが違っていてくれたら、自分も彼を愛することができたならばと願うが、運命はそれを許さなかった。アンドレイは絶望で飛び出していってしまう。マリヤの両親、ヴァシリーとリュボフ・コチュベイが客人とともに到着し、マゼッパのための余興としてホパークなどの踊りや歌が披露される。
その後、マゼッパはコチュベイを脇へ引き寄せ、娘を自分にくれるよう求める。当初、コチュベイは彼がからかっていると考えた - マゼッパは何といっても非常な高齢であったのだ。マゼッパは、老いた心の情熱に一度火が灯れば、明るく燃えはするがすぐに消えてしまう若い心とは違っている - 永遠にくすぶり続けるのだと主張する。しかし、コチュベイはマゼッパがマリヤの代父であり、ロシア正教会では血のつながった親子よりも近い関係だとされているではないかと指摘する。マゼッパは教会には容易に例外の適用を申請できるのだと応じる。コチュベイはマゼッパに立ち去るよう命じる。マゼッパは自分が既にマリヤに求婚して受け入れられており、マリヤに気に入られる術を心得ているというようなことを仄めかす。それでもコチュベイが拒絶するとマゼッパは自らの衛兵を呼び入れる。マゼッパは降伏を要求するが、全員が彼の不道徳な要求を罵って彼に向って立ち上がる。まさに一触即発の事態となった時、マリヤが双方の間に身を投げ入れる。マゼッパは立ち去りつつ、マリヤに対して自宅に留まって二度と自分と会えなくなるのがいいか、自分と来るのがいいか決断するよう呼びかける。彼女はマゼッパを選び、皆が驚くと同時に嘆くのであった。
第2場: コチュベイの邸宅内のある部屋
リュボフがマリヤを失ったことを悲しんでおり、女中らが彼女を慰めようとするがうまくいかない。女中らに席を外させたリュボフはコチュベイをけしかけ、コサックを奮起させて戦争を仕掛けてマゼッパを攻撃させようとする - しかし彼にはもっと良い案があった。2人にまだ親交があった頃、マゼッパはスウェーデンと結んでウクライナをピョートル大帝の支配から解放するために闘う作戦についてそれとなく口にしていた。コチュベイの友人であるイスクラはその案に大賛成であるが、彼らには伝令役が必要である。マリヤを失って自分の人生が終わったと感じていたアンドレイが作戦の伝達を請け負う。皆がマゼッパを呪い、彼を処刑したいと考えているのである。
第2幕
第1場: 夜、マゼッパの居城の地下牢
計画はうまく運んでいなかった。ピョートル大帝はマゼッパに味方してコチュベイを彼に引き渡し、コチュベイが認めると忠実な使用人を悪逆非道な者の手に送ってしまう。拷問によりコチュベイは嘘の告白をしてしまっていた。神に誓って正しくあろうとしたコチュベイは、自分の最後の告白を聞きに神父が現れる音を聴いたように思った - しかし、それはマゼッパの子分で拷問人のオルリクだったのである。コチュベイは彼にこれ以上何を望めるのかと尋ねる - コチュベイは拷問中に尋ねられたことの全てに応じていたのである。しかし、隠された財宝の在り処を明らかにしていなかった。彼は全てを明かしてくれるマリヤを行かせるように、そして処刑の前に祈らせてもらえるように頼む。彼は既に全ての宝を失っている - 彼の名誉は拷問によって引き出された嘘の告白に消え、マリヤの名誉はマゼッパの手に落ち、今あるのは死後に神が仇討してくれる望みだけである。これでもオルリクには十分でなかった - 拷問が再開する。
第2場: 同じ夜、マゼッパの城のテラス
マゼッパは自分がコチュベイにしたことを知った時、マリヤに恐ろしい衝撃が降りかかるであろうことについて思いを巡らせていた - 彼は権力を固めるために強くあらねばならなかった。しかし、マリヤはどうか。オルリクが現れる。コチュベイはまだ財宝について何も明らかにしていない。処刑は夜明けと定められ、オルリクはすべきことを再開するため捌けていく。マゼッパはマリヤと夜について考える。
マリヤが現れてマゼッパにじゃれつくが、彼女の心は暗くなっていく。なぜ彼は最近自分から離れて長い時間を過ごすのか。なぜ彼はこの前の夜ポルタヴァに祝杯をあげていたのか。自分は誰なのか。彼に全てを捧げてしまった今、もし彼に拒絶されたらどうなるのか。マゼッパが彼女を慰めようとし、最初こそ手こずるがなんとか上手くなだめる。彼はウクライナから独立し、自らが王に、マリヤが王妃になるという計画を打ち明ける。マリヤは彼には王冠がとても似合うだろうと考える。次いで彼は彼女の父について彼女を試しはじめる。夫と家族のどちらを好むのか。マリヤは彼に全てを捧げる、否、既に捧げていると口にする。マゼッパは安心して立ち去る。
リュボフが到着し、コチュベイを救うためにマゼッパの元へ行って欲しい、彼を救えるのはあなただけだと嘆願する。このことを何も知らないマリヤが事態を飲み込むまでに少々時間を要するが、ついに事実を了解して恐ろしさのあまり気を失う。リュボフは彼女の身体を揺すって起そうとする。行列は既に過ぎ去っていこうとしている。2人はマゼッパにコチュベイの命乞いをするため逃げ出す。
第3場: 町の防壁の傍
町の貧しい者たちが処刑を見に集まっている。コチュベイに向けられる恐れと気づかい、そしてマゼッパに向けられる嫌悪は陽気でかわいらしい民謡を歌う酔ったコサックにより遮られる。マゼッパとオルリクが到着し、囚人として引きずられてきたコチュベイとイスクラが神に許しを祈る。2人は晒し台まで引きずられ、観衆が取り囲む中で斧が振り上げられる。マリヤとリュボフが登場、斧が振り下ろされる様を目の当たりにする。リュボフがマリヤをはねつけるが、彼女は涙に崩れる。合唱の恐ろしい和音が舞台に響き、幕となる。
第3幕
間奏曲: ポルタヴァの戦い、ピョートル大帝がマゼッパとカール12世を打ち破る
(設定場面)戦場の近く、廃墟となったコチュベイの邸宅
アンドレイはポルタヴァの戦いに出兵していたが、マゼッパを見つけ出すことはできなかった。彼は幸せだった頃を思い出しながら廃墟となった邸宅の周りをあてもなく歩いている。馬に乗った一行が近づき、彼は身をひそめる。
マゼッパとオルリクは戦いから逃げ出し、マゼッパはかつて強大な力を誇った自分がある時全てを失って今に至るのだという想いに耽る。彼はオルリクをキャンプ設営に送り出す。アンドレイが飛び出して刀剣でマゼッパに挑みかかるが、マゼッパは自分は武器を持っていると警告する。アンドレイがマゼッパに向けて構えた刀を振った時、マゼッパが彼にめがけて発砲する。
マリヤが到着するも、完全に取り乱している。彼女はマゼッパが誰かわからず、父のいたずらは母が自分に仕向けたただの冗談であると思い込んでいる。しかし彼女は至る所に血痕を認める。マゼッパが彼女を落ち着かせようとし、マリヤは静まりかけたかと思えば彼にうわ言を口走り、続けて彼の顔に血の跡を認める。すると彼女は謝りながら別の誰かだと思っていたと述べる。しかしマリヤが知るマゼッパは白髪だったはずであり、目の前の彼は血まみれである。オルリクが戻ってきて軍隊がこちらへ向かっていると知らせる。マゼッパはマリヤを連れて行こうとするが、オルリクは足手まといになると指摘する。気のふれた女性と自分の頭のどちらが大事なのかというオルリクの忠言に従い、マゼッパはしぶしぶマリヤを残して立ち去る。
マリヤはアンドレイと、彼の身体を覆う血に気付く。血だらけになった周囲の様子を見て泣き出した彼女は、処刑の「夢」のことを思い出す。まだ息絶えていなかったアンドレイが身体を動かすと、マリヤは彼を幼い子どもであると勘違いする。彼はマリヤに最後に顔を見たいからこちらを向いて欲しいと請うが、自分の世界に入っている彼女は彼に子守歌を歌うばかりで、何が起こっているのか、彼が誰なのかも分かっていない。そうこうするうちにアンドレイは彼女に最後の別れを告げて事切れる。マリヤはその亡骸を穏やかに揺すり、遠くを見つめながら子守歌を歌って幕が下りる。