トム・オデル

トム・オデルは音楽の層を一つずつ剥ぎ取り、人間の弱さや世界の儚さを映し出す、豊かでますます脆さを増した作品群を築いてきました。特にパンデミック以降、そして2021年のアルバム『Monsters』以降、彼のソングライティングは飾らない誠実さを前面に押し出し、新しい世代のリスナーに大きな慰めを与えてきました。7枚目のアルバム『Black Friday』のタイトル曲は2023年末のリリース以来、7億回近いストリーミングを記録し、デビュー曲「Another Love」（2012年）はSpotifyだけで30億回を超える再生を達成しています。

オデルが作家として勇敢になり、心の最も繊細で痛みを伴う部分に踏み込むようになるにつれ、彼は真のアーティストとして確立されました。その証拠に、2023年と2024年の2年連続でアイヴァー・ノヴェロ賞の「最優秀楽曲（音楽性と歌詞）」にノミネートされています。現在34歳の彼にとって、それは啓発的な旅でした。「友達や両親に聴かせるのが少し気まずいと思う曲こそ発表すべきなんだ。そうすることで初めて価値が生まれる」と彼は語ります。「私たちはあまりにも多くのことを胸に秘めていて、それこそが最も私たちを苦しめる。話す準備ができていることではなくてね。だからできる限りそれについて書こうとしているんだ」。

オデルはブリット・アワード受賞者として英国ポップ界の新星と注目されましたが、華やかな商業的成功が彼の原動力になったことはありません。「ポップスターの役を演じたいと思ったことはなく、常に誤解されていると感じていた」と振り返ります。彼は自らのビジョンに忠実であり続け、メンタルヘルスや身体イメージといった深く個人的なテーマを歌に込めることで、TikTokで240万人のフォロワーを持ち、世界中で共鳴を広げています。ビリー・アイリッシュのヨーロッパツアーの前座を務めた後、自身の親密なライブツアーを行い、「存在することの孤独を和らげてくれる」と彼は説明します。「それこそが、私たちみんなが共に経験していることだから」。

現在の7作目となるスタジオアルバムで、オデルは共感と徹底した誠実さの精神を体現する作品を完成させました。壊れた現代社会を見つめ、そこにディストピアや絶望を見出しつつも、美しさや希望の輝きも描き出しています。

『A Wonderful Life』は2024年の9か月間、ツアーバスや列車の中で書かれました。安定した家庭生活から離れ、これまで以上に歌詞作りに心血を注ぎました。「一行一行に取り組んだ」と彼はうなずきます。「毎日、飛行機の中でも言葉を磨き続けた。私は強迫的なところがあって、それは自分の最悪な部分でもある。セラピストに頼んででもなくしたいと思う。でも同時に、それがあるからこそ曲を諦めないんだ」。

こうして完成した楽曲は、これまでのキャリアの中でも最も直接的で心に響く瞬間となりました。絶望的なニュースの連続に対する即時の反応として書かれた曲もあり、「世界が毎週どこかで終わりを迎えている」という感覚を凝縮しています。リードシングル「Don’t Let Me Go」では、SNSの「恐ろしさ」をテーマにしています。「Maybe we’re sick / Sick in our bones...」という歌詞は、列車の乗客が外で世界が崩壊している中、楽しげにスマホをスクロールしている映像に触発されました。また「Why Do I Always Want The Things I Can’t Have」では、「画面を見つめ続けて目が痛い／僕たちが作っているこの世界に信じる力を失っている」と嘆きます。

「それがすべてを要約しているんだ。責任を取ることだよ。僕も君も、権力者も同じくらい責任がある」と彼は語ります。「ただ非難するだけなのは嫌いだ。30年後に振り返ったとき、この世界の責任は僕たち全員にあるだろう。でも僕はまだ楽観的で、もし何かを持たなければならないとしたら、それは自分たちを信じることだ。ここまで来られたのだから」。

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